大阪地方裁判所 昭和40年(わ)4594号 判決
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(罪となる事実)
被告人は木下利夫、長崎昭雄と共謀のうえ、昭和四〇年九月一二日夜、ダンスホールで知り合い被告人の運転する自動車に乗せていた杉原こと李貞子(当時一九才)を姦淫しようと企て、翌一三日午前零時過ぎ頃大阪府八尾市高砂町一、四九〇番地附近の野小屋および同市桂町、桂小学校附近の路上に停車中の右自動車内において共同して、手で同女の顔面を欧打し、言うことを聞かねばどこかへ売りとばす旨ほのめかし右暴行、脅迫により反抗を抑圧し、よつて右木下、長崎、被告人の順に、強いて同女を姦淫したものである。
(強姦致傷罪の公訴を強姦罪と認めた理由)
本件公訴は被告人等の李貞子に対する判示強姦により同女に全治まで三日間を要する腔外陰部擦過傷を負わせたものであるというにある。しかし、右傷害に対する証拠を検討すると、医師福田博司作成の杉原貞子に対する診断書には単に腔外部擦過傷とあるのみであり、又、右福田医師の司法巡査に対する供述調書によれば前記の傷は長さ一センチ位のものが二つあり、この傷は新しく小量の出血が認められたとあるにとどまり、之が治療の必要性の有無も更に公訴のように全治まで三日間を要するとの表示もない。そしてこれを被害者の当公廷における「手当をしなかつた」との証言に照すときは右は治療とか全治何日とかいつたものではなく、被害者の日常生活上何等の支障もなくまた自覚もなかつたものと考えられる。尤も同女の右証言中には被告人より姦淫された際「陰部は痛く血も出たと思う」と恰も処女膜裂傷を生じたような供述があるけれどもこれを右医師の「処女膜の破損は古いものである」との供述記載に照すときは信用できないところである。そして長さ一センチ位の治療を要しないかき傷二と雖も、もとより医学上は傷害に相違ない。然しかかる軽微で日常生活上何等の支障も痛ようもなく、また治療の必要もなく、放置しておけば間もなく自然に回復するようなものは身体に対する暴行のうちに包含され、刑法上いわゆる傷害とは認め得ないものと解すべきである。よつて本件犯行は強姦致傷罪ではなく強姦罪であると認定したものである。(吉益清 梶田英雄 川端敬治)